宇賀神先生の声を聞きたいと、その存在を強く感じたいと願っています。
先生が佛様の国に旅立たれてから2年たった今、ときどき声を聞いたかなと思える瞬間が増えました。
ですが2年前の今頃、宇賀神先生が佛様の国に旅立たれた日からそんなに時間もたっていなかったあの頃は、先生の声を聞くことは皆無だったように思います。
喪失感や悲しみに、文字通り押しつぶされそうになりながら日々を生きるのがやっとでした。
あの頃は大好きだった映画を見る気にもなれませんでした。
音楽でさえ聞くのも嫌で、クラシックやヒーリング・ミュージックといったようなものも聞けば少しは気がまぎれるのかと音楽をかけてみても、10分もしないうちにプチッと電源を切ってしまっていました。
心の余裕がどこにもないんだなと、自覚していました。
ところがある日、何の偶然だったか忘れましたが、スマホからある音楽が聞こえてきました。
私の知らない英語の曲で、若い方のポップミュージックのようでした。
一瞬聞こえた旋律に何故か心を強く惹かれて、どうしてもこの曲を聞きたいと慌てて曲名を調べました。
それがチャーリー・プースさんの「One Call Away」でした。
One Call Away、つまり「たった1本の電話ですぐにかけつけられる距離」という意味のタイトルです。
「たった1本の電話ですぐにかけつけられる距離だよ。だからいつでも呼んでおくれ、すぐにかけつけるから。いつだって君のことを助けるから。」
という、恋人への愛情を歌った歌です。
そして、
「君がどこへ行こうとも君はひとりじゃない。」
と歌っていました。
どんな美しい音楽も聞き入れられなかったあの頃、この曲だけは聞きたいと思ったこの感覚は、宇賀神先生が歌に乗せて心を届けてくださったからなんだと思いました。
だから強烈に聞きたいと思い、何の曲か慌てて調べたのです。
この曲のなかに
「スーパーマンだって僕には敵わない」
というフレーズが出てきます。
このスーパーマンという言葉、本当は思い出すのもつらいのですが、宇賀神先生が亡くなられたあの日、私の頭の中でぐるぐると回っていた言葉でした。
あの日、運び込まれた病院で、恐怖にうち震えながら宇賀神先生の生還を祈っていたあのとき、心の中で「どうやったら時間を過去に戻せるんだっけ」とぐるぐると愚かな問いを繰り返していました。
たしか古いスーパーマンの映画では、スーパーマンが亡くなった恋人を生き返らせるために地球を1秒間に7回転半逆方向へ巻き戻したんだった。
誰でもいいから、スーパーマンでもいいから、巻き戻して。
こんなことが起きる前の時間まで、巻き戻して・・・!
自分でも愚かな考えだと分かっていながらも、心の中でそう叫んでいました。
何度も何度も、そう叫んでいました。
もちろんその願いは叶いませんでした。
そして、あまりにもばからしい言葉で、あの日とスーパーマンなんて言う言葉の組み合わせが何とも滑稽で愚かなように思えて、このことは今まで誰にも言ったことがありませんでした。
こうして今、文字に表すのもつらく、涙が出ます。
ですが、One Call Awayを聞いて、何故か心惹かれて慌てて曲名を調べ全曲を聞いたとき、私はこれは宇賀神先生からのメッセージだと思いました。
私の心の中のスーパーマンという言葉をキーワードとして使って、歌に込められたメッセージに気づくように伝えてくださったんだと思いました。
ひと言名前を呼べばすぐに飛んでくる
いつだって助けるよ
ただ君に愛をあげたい
どこへ行こうとも君はひとりじゃない
綾野はひとりじゃない。
いつだって宇賀神先生が一緒にいてくださっている。
そう、宇賀神先生が伝えてくださったんだと思いました。
One callを、電話のコールではなく、名前をひと言呼べば、と言ってくれているように感じました。
悲しくて寂しくて世界を丸ごと失ったようで、どうしていいのか分からなかったあの頃。
宇賀神先生の声を聞きたくてもまったく聞こえなかったあの頃。
宇賀神先生が悲しみに強く閉ざした私の心に、歌に乗せてメッセージを届けてくださったのだと思いました。
One Call Awayの全曲を知ったとき、私はそう確信して、嬉しくて何度も何度もこの歌を聞きました。
今でも大好きな歌です。
そして最後のおまけがあって。
この歌の終わりの方に
「怖がらなくていいよ。(つらいときは)長くは続かない。」
というフレーズが出てくるのです。
私はこの部分を、ひとりで寂しい人生をそんなに長く生きなくていいのかも、と解釈しました。
宇賀神先生のいらっしゃらない世の中で、めちゃくちゃ長生きまではしたくないと心ひそかに思っています。
もちろん命を粗末にするつもりはなく、大事に生きていくつもりですし、今ある命に感謝しています。
ただ、100歳のような長寿も望んでいません。
宇賀神先生のいらっしゃらない世界は寂しすぎて。
それが、この歌が「寂しいときはそんなに長くは続かない」と言ってくれたような気がしました。
人間と言うのは、というより私と言うのは、矛盾したもので、永遠に長生きできないからこそ今ある命に感謝して大事に生きていこうとするのだと思っています。
宇賀神先生のいらっしゃらない世の中をそんなに耐えて長く生きなくて済むのなら、命のある間は感謝して生きていけると思えました。
宇賀神先生は今でも、言葉や声で聞こえるだけでなく、色々な形で思いを伝えようとしてくださっていると信じています。
どうかこの先も宇賀神先生からの優しいメッセージにたくさん気づいていけますように。
愛しているという私からのメッセージも、宇賀神先生に届いていますように。
と、書いた瞬間、
「届いてるよ。」
と聞こえた気がしました。
本当だったらいいな。
合掌