桜島サービスエリアから1時間も走ったところで、大金の入ったウエストポーチをトイレに忘れてきたことに気づいた宇賀神先生。
顔が文字通り血の気を失っておられました。
立ち寄ったコンビニエンスストアからゴージャスなプリンも買わずに慌てて出て、その駐車場でスマホを取り出しました。
桜島サービスエリアを検索し、電話をかけ、祈るような気持ちで尋ねます。
「あのっ、大阪の宇賀神と申しますが、1時間ほど前にそちらのお手洗いで主人がウエストポーチを忘れたようなんです。ベージュ色で、中にはちょっと大きな金額の入っている財布があったのですが。そちらに届いていませんでしょうか?」
すると、
「あっ!お忘れ物、届いております!」
「ええっ!ホントですかぁーーー(ToT)(ToT)♥!!!」
なんと、宇賀神先生の後生大事なウエストポーチが、忘れ物として届けられていたのです!
しかも中のお金もそのままあったようです。
ああ、日本は何と素晴らしい国でしょうか!
日本にお住まいの方達は、なんと素晴らしいのでしょうか!
あんなに大きな金額が盗まれずに届けられていたなんて!!
夢みたい♥
すると、サービスエリアの方が、
「ですが、金額が大きかったですので、すぐに警察の方に届けていて、今はここに無いのです。姶良(あいら)警察署というところです。担当の警察官のお名前は・・・」
と、教えてくださいました。
もう何度も何度もお礼を申し上げ、電話を切りました。
多分私の声はうわずっていましたね。
そして、鹿児島の姶良警察署にお電話しました。
「先ほど桜島サービスエリアにお財布の入ったウエストポーチを忘れた宇賀神と申します。」
すると、警察官の方が確かに預かっていますとおっしゃいました。
そして、すぐ返していただくことも可能だとのことでした。
もう、どんなに安心したことでしょう!
ただ、警察にお電話した時点でフェリーの出港時間まで3時間を切っていました。
姶良警察署は桜島サービスエリアの少し先です。
車を停めていたコンビニから1時間は確実にかかります。
往復で2時間以上、それに手続きに20〜30分?
しかも大晦日のこの日、渋滞が起こらないとも限りません。
つまり、フェリーの出港時刻に間に合わない可能性の方が高くなります。
そこで、あと3時間弱で出港のフェリーで帰阪する旨をお話し、宇賀神先生のウエストポーチを大阪(の警察署)まで届けていただくことが可能かどうかお尋ねしました。
すると、何ともありがたいことにそれができるとおっしゃるではありませんか。
これで万事オーケー!
宇賀神先生に、大阪の警察署で受け取りましょうとお伝えしました。
すると、
「絶対ダメー!!!今日中に受け取らないとダメ!この手に帰ってくるまで信じられない!!!」
と。
「何でよー。『世界一安心な日本の正義』の警察が届けてくれるねんで?ヤマト運輸さんでもすごい安心・安全やのに、それよりさらにすごい正義の味方、警察やで?絶対大丈夫やん。」
と言いましたが、聞きません。
「絶対ダメだーーー!!!」
・・・もう、目が三角に吊り上がっています。
テコでも言うこと聞かなさそうです。
「すみません、やっぱり今日中にお返しいただきたいそうです。今からそちらへ参ります。」
わざわざそんな「ほぼフェリーに乗り遅れるのが確実」な方を選ばなくても、と思いましたが、まあ、気が気じゃないのでしょうねぇ。
それに、年始を迎えるにあたり、大事にしているお金が手元にないままというのも、ちょっと縁起が悪くて可哀想な気もいたします。
あーあ、これでフェリーのキャンセル料・・・いくらになるのかな。
もしかして当日だから全額とか?
と、キャンセル料におびえつつも、とりあえず宇賀神先生の半泣きの訴えを聞いてさしあげようと、志布志港とは反対方向の、姶良警察署に向けて出発しました。
その途中、高速道路上から再び桜島を見ました。
どうやら九州自動車道を東から西に向かって行く方が、桜島が綺麗に目の前に見えるようです。
まぶしい太陽に照らされて、きらきらと輝く海の上に、まるで黄金色とも白金色ともつかないような、なんとも素晴らしい色に輝く桜島です。
写真を撮りたかったですけど、ハンドルを握っていたため叶わず。
心のシャッターを何枚も切りました。
とても雄大な山でした。
「この景色を見られただけでも、戻る価値があったかな♥」
そう思いながら再び西に戻るべく車を走らせました。
そして、姶良警察署に到着。
年末の閑静な住宅街に囲まれて、その警察署はありました。
車をおりて館内に入りますと、大晦日のためか、警察署全体はひっそりとしていました。
そしてそこに残っておられる警察官の全ての方が、入り口のカウンターのところに集まっていらっしゃるような雰囲気でした。
もしかして、「こんな大金を落としたのは一体どんな人間なのか?」と、見てみたかった?( ̄∇ ̄;)
なんだか本当に皆さんの「興味津々」の電波が飛んできているようでした。
落とし物の担当の方は、若い女性の方でした。
まるで新・社会人かのように初々しい方です。
まず、落としたものは何なのか、中に何が入っているのか、などを尋ねられました。
お財布の色、金額、他の中身、携帯の番号、など覚えているかぎりのことをお伝えしました。
そしてやっと、その忘れ物を確かに私達の持ち物だと認めていただき、出していただけました。
「よかったぁー(T-T)♥」
中を見ますと、お金も一切盗まれることなく、入っていました。
「ああ、あります、あります。入っていたもの全て残っています。ありがとうございます!」
もう、何度ありがとうをお伝えしたでしょう。
「お時間お急ぎでしょうけれど、書類の記入をお願いします。」
と、氏名やら何やらを書くように出されました。
「もちろんです!喜んで書きます!」
書類に色々を記入しておりますと(もちろん私が記入します。宇賀神先生はこういう事務手続きがとことん不得手なのです。)、横にいらした別の警察官の方が親し気に(興味津々に)尋ねられました。
「ご職業は何ですか?」
「あっ、お寺の住職です!ボンノーまみれの!!!」
と、ポンと宇賀神先生の肩を叩きながら、間髪入れずにお答えしました。
皆さん大「苦笑」♥
「ご旅行だからこの金額をお持ちだったんですか?」
「いえいえ、いつも持ち歩いてるんです。」
そこにいらした皆さんびっくりなさっていました。
「この人の性分なんですよ。でも、一度でも落としたり失くしたりしたらもう2度と大金は持ち歩かないって、前から約束していましたから。なっ!もう持ち歩かへんやんな!約束通り、銀行に預けるやんな!」
と、再び宇賀神先生の肩をたたきました。
「う・・・うん。」
と、うなずくしかない宇賀神先生。
ちゃっかり「日本の正義」警察官の方達の前で約束を確かに取りつけました。
もう、大阪人の血が騒いでしまったのか、純朴そう~な鹿児島の警察官の方達の前で色々と夫婦漫才を繰り広げてしまいましたよ。
見るからにのどかな鹿児島の警察署で、多分「金額」にびっくりなさっていたところに、宇賀神先生のいで立ちにびっくり、「年の差夫婦」にびっくり、させてしまったんですもの。
これくらいのサービスしなくちゃね?( ̄∇ ̄)♥
そして、拾ってくださった方にお礼(現金による)をしないといけないかな、と思って尋ねますと、どうやらサービスエリア(企業)が警察に届けられましたので、その必要はないようでした。
そう言えば私も新幹線でお金の入ったお財布を拾い、乗務員さんに届けたことがございましたが、私の住所も名前も尋ねられませんでしたものね。
後で別の方にお聞きした話ですが、銀行のATMで商売の資金の100万円を引き出してそのままそこにポンと置き忘れた方が、幸運なことにそっくりそのままお金が銀行に届けられていて手元に返していただけたのですが、やはりお礼をしなくてよかったそうなのです。
企業さんが届けてくださるというのは、そういうものなのでしょうね。
いずれにしましても、本当にありがたいことでした。
桜島サービスエリアさん、九州自動車道さん、そして何より拾ってくださりサービスエリアに届けてくださった方(スタッフの方でしょうか、それともお客さんでしょうか)、本当にありがとうございました。
姶良警察署の皆さんにも、まさに大晦日の日に大変お世話になりました。
皆さまのお心、ご親切に深く感謝申し上げます。
心より、心より。
ありがたかったですー!!!
日本はなんていい国なんでしょう。
人々はなんて、素晴らしいのでしょう。
神さま佛さま、ありがとうございます。
お陰様で、私たちは幸せ者です。
本当に本当に、ありがとうございます。
ありがたすぎて泣けてきます。
そして・・・
九死に一生を得たような心持ちで無事に警察を後にした私達。
その後、無事フェリーに乗れたのか?はまた明日。
もう大金さえ返ってきたことが分かったら、フェリーに乗れたかどうかなんてどうでもいいかナ?
そんなことおっしゃらず♥( ̄∇ ̄;)
合掌