「お気をつけて」と“水難の相”

宇賀神先生は決して「悪い霊がついているからお祓いしないといけない」などという脅かし方はなさらない、と先日お伝えしました。

逆に、面白いことに、うちに来てくださったご相談者様のお加持をなさるときに、「(そのご相談者様に憑いていた霊が)ついでに取れてしまった」というパターンはよくございます。

宇賀神先生はよく、「霊がわしの方を怖がって逃げていくんだよ。」と笑いながらおっしゃいます。

 

あるときなど、お加持を終えられたご相談者様が玄関先で、

「ありがとうございました。お陰様で身体がすっきりしました。」

とおっしゃりながら、肩に乗ったホコリをサッサッと払うような格好をなさいました。

その方は腫瘍を患い、うちに来ておられました。

すると宇賀神先生は笑いながら、

「貴方の今のそのジェスチャーは『身体言語(しんたいげんご)』と言って、本人が意識しないところで身体がしゃべってんだよ。

さっき『身内にがんで亡くなった人がいる』って言ってたよね。

その人がちょっと憑いてたのが落ちたんだよ。

ふつう『身体がすっきりした』って、肩のホコリを落とすような格好をする人はいない。

つまり、肩に乗っかってた霊が落ちて軽くなったのを、貴方の頭(理性)は知らなくても、心や身体は分かってたんだな。」

とおっしゃいました。

その方は

「ええーっ!」

と、びっくり仰天でした。

と申しますのも、実は「もしかしてがんで亡くなった姉が自分の病気に関わっていたら」と、内心とても不安に思われていたのだそうです。

 

宇賀神先生の日常は、本当にまんがのように面白くて退屈しません。

普通でしたらオドロオドロしい「霊が憑く」などという出来事も、何だか笑い話になってしまいます。

お陰様で私は安心して楽しく暮らしております。

 

ただ、もし本当にその人に「危ないな」と思われますような兆候が表れておりましたら、そんな危険なことにならないよう注意喚起をなさることもございます。

それが

「お気をつけて」

という言葉です。

「えっ、そんな日常的な言葉で?」と思われた方、実はこれが世に言う「言葉の魔力」なのですよ。

「言霊(ことだま)」とも申しますよね。

 

あるとき、宇賀神先生のもとへ来てくださったご相談者様のお顔に、よくない人相が現れておりました。

先生は人相もご覧になられますから。

先生は、

「あんた、水難の相が出てるよ。気をつけなね。」

と、その方におっしゃいました。

するとその方は笑いながら、

「先生~、うちの近くには海も川もありませんよ。水難なんて起こるようなところじゃないですってば。」

と、おっしゃったそうです。

 

宇賀神先生は、

「いや、それでもいいから。

わしが『気をつけて。』と言ったことに、あんたは『はい。』って言うんだよ。

すると、あんたは分からなくても、あんたを守ってる守護霊がそれを聞いて気をつけるからね。

そしたら大難が中難、中難が小難、小難が無難、になるからね。」

とお伝えなさいました。

 

宇賀神先生の「水難の相」のお言葉を信じられないまま、ただ先生のお言葉通りに「はい」とだけ返事をなさって笑いながら帰られたそのご相談者様から、数日後お電話がかかってきました。

 

「先生~、今私どこだか分かる~?」

「ええ?分かんねーよ?」

「病院!私、入院してるの~!」

とのことでした。

その方が入院なさった訳とは。

 

その女性は当時お一人暮らしで、ちょくちょくご近所のスナックにカラオケをしに行っておられました。

カラオケの帰り際のことです。

そのスナックは車道に面しており、お店から道路に出る手前には水の流れている溝がございました。

お酒を飲んでカラオケを歌われて、すっかり上機嫌で帰ろうとなさったその方は、酔っておられたためうっかりと溝に片方の足を踏み入れ、「あっ!」と思ったらもう片方の足も溝にはまってしまい、あろうことかそのまま両足のすねの骨をボキッと折る形で前に倒れてしまったのです。

次の瞬間、倒れ込んだ頭のすぐ上ぎりぎりのところをダンプカーがザァッと通っていきました。

文字通り「間一髪」、頭をダンプカーにひかれずに済んだとのことでした。

 

その女性は、宇賀神先生のおっしゃった「大難が中難、中難が小難、小難が無難」になりました、と感謝なさいました。

水難の相も、まさにその通りでした、と。

海でもなく川でもなく、まさか溝の水だったなんて。

 

宇賀神先生のたったひとことが、その女性の難を軽減させたと思っております。

両足の骨折も大変と言えば大変ですが、その女性にとりましては、

「もしかしたら命を落とすところだったかも知れないのを、骨折だけで済んだ」

と、思われたのではないでしょうか。

ですからこそ、先生に感謝してお電話くださったのです。

 

宇賀神先生の勉強会でこのお話をお聞きしましてから、言葉って力があるんだなぁ、と思うようになりました。

もしかしたら、宇賀神先生のお言葉だからこそ、その女性の守護霊まで届いたのかも知れません。

ですが、今となりましては、いやしくも私も真言宗の出家であります。

真「言」宗ですから。

言葉には魔力がある、と思えなくてどうしましょう。

たとえそれが密教上のご真言でなくても、日本には古くから言霊信仰(ことだましんこう)もございます。

やはり、言葉には不思議な力があるのでしょう。

 

ですので、宇賀神先生も私も、ご相談者様がお帰りになられるときは、心掛けて

「お気をつけて。」

と申し上げます。

おろそかに申し上げたことは一度もございません。

ただただ、ご無事にお帰りくださいますようにと、願いを込めて、申し上げております。

 

合掌