蛇のたたり?

今日は「蛇の祟り」についてのエピソードをお話しましょう。

 

宇賀神先生が仙台でお仕事なさっていた頃のことです。

いまからだいたい30~40年ほど前の約10年間ですね。

その頃は東北地方に「キツネ憑き」と呼ばれる現象がまだまだ色濃く残っていました。

(ちなみに中国地方では「たぬき憑き」や、四国では「犬神憑き」が主流だったようです。)

また全国的にも某宗教団体による「浄霊」が大流行りしていた時代でした。

皆さまもひと頃ご経験なさったことはございませんか。

駅のすぐ近くで「浄霊させてください」と声をかけられたことが。

全国的に「霊が取り憑いている」という考えが浸透していた時代です。

 

先生が仙台の自宅でお仕事なさっていたときに、とあるお寺さんから電話がかかってきました。

「お宅様はキツネ憑きを落とせるそうですね?今すぐタクシーに乗ってうちへ来ていただけませんか?」

なんと、どこから宇賀神先生の噂を聞かれたのか、見ず知らずのお寺さんからヘルプの要請がきたそうです。

あまりにも慌てておられた様子に、先生は言われた通りタクシーに乗り、町とお寺さんの名前を告げて向かわれました。

 

そこへ着きますと、お寺の門の前に人だかりがございました。

宇賀神先生が中へ入りますと、そこにはトンデモナイ光景が広がっていました。

なんと、本堂の縁側にある欄間のところに、水色のミニスカートをはいた若い女性が、まるで動物のナマケモノのようにぶら下がっているのです。

欄間ですから、人の頭の高さより少し高いところでした。

まずそこまでどうやって非力な女性の力で登っていったのかも不思議ですし、また、そこにナマケモノのようにぶら下がり続けるのも、相当な力を要します。

よほど鍛えた方でも難しいのではないでしょうか。

なぜその女性がぶら下がり続けられるのかが不思議でした。

しかも短い丈のスカートもめくれて、下着が丸見えだったそうです。

「なんじゃこりゃ。」

と、宇賀神先生もびっくりでした。

 

実はこの女性は、「蛇に取り憑かれた」とご家族がそのお寺に連れてこられたのだそうです。

お寺のご住職が取り憑いた蛇を成仏させようと女性を後ろに座らせ、お経を読み始めようとしました。

すると、カーンと鳴らす鉢の音と共にその女性はバタッと気を失うように倒れ、次の瞬間スゥーッと起き上がったかと思うと、顔の表情も変わり果てていたそうです。

若い女性とは思えないような、地の底から聞こえてくるような恐ろし気な声で「自分はこの女に憑いた蛇だ」と名乗ったそうです。

そしてそのまま蛇が地面を這うようにニョロニョロと身体とくねらせ、お堂を出て縁側のところまで行き、柱をよじ登って欄間にぶら下がりました。

田舎のお寺ですから、たまったものではありません。

うら若き女性がスカートもめくれ、パンツ丸出し(失礼!)でお寺の欄間にぶら下がっているのです。

物見高い人達がなんの騒ぎかとたくさん見に来られていました。

 

ことの次第をお聞きになった宇賀神先生は、お寺さんに「お経本とお数珠を貸してください」と頼まれました。

とにかく急いで来てくださいと言われたため、着の身着のままでいらしてたのです。

先生は女性の下に、万が一欄間から落ちたときに怪我をしないよう、布団を敷くように頼まれました。

そしてお経本とお数珠を片手に持ち、女性に近づかれました。

 

「お前は誰だ?」

と宇賀神先生はその女性に向って尋ねられました。

「わしはなァ、この女に取り憑いた蛇の霊じゃ~。」

と、女性のものとは思えない、ドスのきいた声で答えてきました。

「なぜこの女に取り憑く?」

「わしが昔、この女の先祖に面白半分に殺されたからじゃ。

この女の先祖は百姓だった。

田んぼにいたわしを、この女の先祖が鍬で殺したのじゃ。

面白半分にな。

殺す必要はなかったのに。

だからその恨みを忘れることだできず、この女に取り憑いておる。」

その女性に取り憑いた蛇の霊は、まさに蛇の祟りかと思うような女性らしからぬ声で、このように語りました。

 

そこで、宇賀神先生は、こう尋ねました。

「そうか、あんたが蛇の霊なら、わしはひとつ聞きたいことがある。」

「なんじゃ~。」

と、律儀に蛇の霊は答えます。

「蛇は祟るんだな?」と尋ねますと、

「た~た~るゥ!」と、さも恐ろし気に答えます。

「実は前から不思議だったんだがな、蛇は、たしかに祟る。

だのに、どうしてウナギは祟らないんだ?

おんなじ足がなくてニョロニョロしてるのにおかしいじゃないか。

一体どうしてなんだ?」

 

「・・・へっ?」

 

と、なった瞬間。

「喝ーーーっ!!!」

という怒号もろともにお経本でその女性の額をパーン!とはたきました。

 

すると女性はするすると上手に欄間から降りて来られ、宇賀神先生の前に正座なさいました。

「分かったか?」

との宇賀神先生の言葉に、女性らしい声で

「はい。」

と答えられたそうです。

見事、取り憑いた蛇を祓った瞬間でした。

 

お寺さんと女性のご家族に感謝され、この件は一件落着となたそうです。

 

 

後年、このお話を宇賀神先生から私がお聞きしましたとき、

「それって本当に蛇の祟りやったん?」

と尋ねました。

すると先生は、

「たぶんあの時のは霊が憑いてたんじゃないと思うな。」

と、おっしゃいました。

ですが、その女性がナマケモノのようにぶらさがり続けられたのは、尋常ではありません。

蛇の祟りではないとすると、一体何だったのでしょうか?

 

続きはまた明日に。

 

合掌