知り合いのフィリピン人の呪術師(この方も有名な方だったそうです)にご相談なさったG氏。
相談しておられる間も痛みが続きます。
G氏が「ここが痛い!」とうめきますと、呪術師はその箇所をなでさすり口を当てて
何かを吸い出すような格好をし、それをオエッと吐き出されます。
その吐き出されたものの数々が、私が空けましたガラス瓶の中に詰め込まれておりました、女の人の髪の毛やサソリやその他諸々でした。
不吉なものが出てくるわ出てくるわ。
キリがありません。
呪術師は、
「あんた誰かに呪われているよ。女の恨みだね。相手はあんたが死ぬまで呪い続けるからね。相当、腕のたつ術者に守ってもらわないと、あんたこのままじゃ死ぬよ。」
と、おっしゃったそうです。
そのときG氏は
「この状況を助けてくれるのは、宇賀神先生しかいない。」
と、思われたとか。
その呪術師が本当にG氏の呪いのもとを吐き出されたのかは分かりません。(口から髪の毛やサソリの死骸が出てくるとは、ちょっと思えません。)
当時はトリックも多用したような怪しげな呪術師も、世界的に流行っておりましたから。
ですが、G氏の全身の痛みは現実です。
そして、どうやら呪いをかけられているというのは、間違いないようでした。
フィリピンでは呪いを職業になさっている蟲使い(むしつかい)もいらしたそうです。
蟲使いの人にとりましては、20数年前当時、例えば日本円で30万円ももらえば、1年間は遊んで暮らせるほどの金額になるのです。
するとその間、依頼されてひとりの人をずーっと呪い続けるのです。
他の仕事をしなくてもいいわけですから。
呪われた方はたまったものではありません。
G氏もお蔭で、絶え間のない痛みにさいなまれました。
G氏は呪術師が吐き出された不吉なものの数々をアルコール漬けにして日本に持ち帰り、宇賀神先生のもとに持って来られました。
(それでそのままガラス瓶を置き去りにしなくても!)
宇賀神先生のところで、他のご相談者さまの順番を待っておられる間も彼は「痛い!痛い!」ともだえ苦しむのだそうです。
見かねた他の方が、
「先生、私は後でいいですから、あの方を先にしてあげてください。」
と、おっしゃるほどだったそうです。
「しょーがねーなー。」
と、G氏を見ますと、身体のあちこちに、長さ30センチくらいの銀色の細く長い針(もちろん普通の人には見えない)が刺さっています。
「これかー。」
と、宇賀神先生が抜きますと、その部分の痛みがなくなります。
宇賀神先生は、その針を抜いて、手にある印(いん・密教で佛様のご真言を唱えるときに形作る手の作法)を結び、あるご真言を唱えたあと、その針にフッと息を吹きかけ、飛ばします。
そうですね、飛ばすときの様子を例えますなら、昔見ました「西遊記」の孫悟空が頭の毛を抜いてフッと息を吹きかけ飛ばしますと、自分の分身になりましたよね。
あれに似た感じで飛ばします。
もちろん目に見えない、向こうから飛んできた呪いの針を、です。
すると、その針は遠く呪いをかけたフィリピンの蟲使いのもとへ飛んでいき、その人に刺さります。
要は、「呪い返し」です。
呪いをかけた人に、そっくりそのまま返すのです。
宇賀神先生は、G氏の全身に刺さった長い針を次々に抜いては、全て返されました。
やっとG氏の苦しみが楽になりました。
ところが。
またしばらくしますと「ううーっ」とうめきながらG氏が苦しみだすのです。
見ますと、再びおびただしい数の針が刺さっています。
「こりゃ、キリがねーなー。」
と、宇賀神先生も困られました。
相手の蟲使いはG氏を呪うことだけを寝ているとき以外ずっと続けられますが、先生は他のお仕事もあり、G氏のためだけに24時間呪いを返し続けることは不可能です。
さあて、そこで、活躍したのは誰だとお思いですか?
宇賀神先生が困っておられたのを見たのか、はたまた面白い遊び♥だと思ったのか、先生が頼んでもいらっしゃらないのに、自ら動きだしてくれました。
キラッと銀色に輝く針が、どこからともなくG氏めがけて飛んできます。
それを猫ちゃんたちがG氏に刺さる前に空中でキャッチし、そのまま相手に投げ返します。
まるで猫じゃらしに夢中になって飛びつく猫のように、銀色の針に飛びついてキャッチするのです。
針は次々と飛んできますが、猫ちゃんたちがことごとく返してくれました。
なんていい子たちなのでしょう。
「これはいい!」
と、宇賀神先生も大助かりです。
しばらく、そのフィリピンの蟲使いが懲りて呪うことをやめるまで、猫ちゃんたちをG氏に護衛としてつけてあげることにしました。
猫ちゃんたちは霊体ですから、眠ることはありません。
24時間、彼のために働いてくれます。
宇賀神先生やG氏が夜眠っているときでさえ、働いてくれます。
なんとも頼もしい護衛ですね。
(その3につづく)
合掌