呪術合戦 その1

祈りに力があるのなら、呪いにも力があると思われますか?

残念ながら、答えはイエス、です。

 

私が宇賀神先生と結婚しましてから、最初に取り組みましたのは、奈良にございます先生のお寺の大掃除ならぬ大片付けでした。

ちょっとお恥ずかしい話、めちゃくちゃに不用品だらけで、1階の住居部分などは特に足の踏み場もないほどでした。

そこで、家具なども含めましてゴミを引き取ってくださる業者さんにお願いし、一大処分することにしました。

 

ですが、例えば缶ジュースなどの古いものを引き取っていただく場合、缶と中身の分別は私がしないといけないとのこと、引き取り処分当日はその分別に明け暮れました。

なにしろ20年前に賞味期限の切れたジュースが何箱もあったり、中身が真っ黒に変色してしまって、元が何でありましたか(多分、梅酒とか?)見当もつかないような大きなガラス瓶などが山のようにあります。

流し台にザルを置きまして、中身を片っ端から空けていきました。

 

そのうちのひとつ、中身がやはり真っ黒になっておりますガラス瓶をザッと空けたときのことです。

なんと驚いたことに中から出てきましたのは、女の人のものと思われます長い髪の毛の束と、サソリと、あとわけのわからない真っ黒に変色したものの数々でした。

「XΔ≅*#$%&+<=∑!?!?!?」

オロがくるとは、まさにこのことです。

日本語になっていない声をあげ、腰が抜けそうになり、その場でたたらを踏んでしまいました。

 

ゴミ処理業者の方は私の声にびっくりして飛んでこられて、ザルの中をご覧になり、

「あらー。」

と、何故か余裕のリアクション。

鳥肌がたってオロオロしております私に、

「ま、がんばってください。」

とかなんとか笑いながらおっしゃいました。

 

『まじ?怖がってる私の代わりにゴミ袋に入れてくれてもいいやん!(ToT)』

と思いましたものの、元来気がヨワイもので?よう頼みません。

震える手でゴミ袋に入れましたよー、その髪の毛とサソリ!

 

今思い出しましても、鳥肌がよみがえるようです。

 

そして、宇賀神先生に電話しました。

「大きなガラス瓶から髪の毛とサソリと、その他諸々出てきたよー!」と、震える声で訴えますと、

「ああ、それ、G氏の例の“呪い”のもとだよー。」

と、笑いながら言います。

「そんなの、まだそこにあったのかー。」

と。

人が生まれて初めてたたらを踏むという経験をしましたのに、なんで笑えるのー、と思いましたが、それが宇賀神先生です。(?)

それに、G氏がもう何年も前、“フィリピンの蟲使い(むしつかい・呪術師の一種。虫などを使って、人を呪うことを職業にしている人)”なる方に、ひどい目に会わせられましたことは、私も聞いておりました。

またそれが、マンガのようなホントの話なのですが・・・。

 

今から20数年前、G氏は当時流行っておりましたテレビの怪奇番組のプロデューサーをなさっていました。

怖くて怪しげな?ことばかりを取り上げる番組です。

そのお仕事でフィリピンに行っておられました。

そしてそこで、とある人間関係のトラブルに巻き込まれますと、その後全身が痛くて苦しくて仕方がないという症状に見舞われました。

 

さすが怪奇番組のプロデューサーです、すぐにお知り合いのフィリピン人の呪術師のもとへ相談しに行かれました。

フィリピンでは、呪術師という職業が存在するのですね?

日本で申しますところの霊媒師というところでしょうか。

 

「呪術」と申します言葉自体に“呪い”の文字が入っておりますので、なんだかオドロオドロしいような気がいたしますが、広範囲の意味でとらえますならば、英語で申しますところのシャーマンも呪術師ですし、宇賀神先生のお仕事だってある意味、呪術師的な部分があります。

「呪」という漢字の成り立ちが、「口で何かを唱えながら踊る・あるいはひざまずく」などと申しますようですから、もともとは悪い意味ではありません。

要は呪文を唱えながら祈る、というような意味でしょうか。

現に、日本で一番有名な般若心経というお経のなかでは、「呪」という漢字は「マントラ」=「ご真言」を表す単語として使われておりますように、いい方の意味で用いられております。

「呪」はもともと、私たち真言宗徒にとりましては、ありがたい「ご真言」と同じ意味で使われていたのです。

 

さて、そのG氏、尋ねて行きました呪術師に、驚くようなことを言われました。

 

(その2につづく)

 

合掌